前にR30に出演していて興味を持った、一色さんの作品。「病院へ行こう」、「私をスキーに連れてって」等のヒット作があるようだが、僕らの世代には「ショムニ」の脚本家と言った方が分かりやすいかもしれない。
この本は、エッセイなのだが、うつを扱うだけにものすごく深い内容だ。
「うつとは理解はできるが、感じることができない、脳にサランラップを巻いたような状態」と言う。おいしいものを食べているというのは分かるが、感じられないらしい。
「うつは病気」という認識が必要だと思った。その人の心の弱さのせいにして、精神論、根性論で説き伏せることで、治してあげようという無神経な人間はたくさんいると思う。僕もうつの人に会ったらそうするかもしれない。しかし、覚えておかなければならないのは、うつとは、周りの人の力ではどうすることもできない、ただ時間のみが解決してくれる病気だということだ(もちろん医学的な処方も必要だが)。
しかし、このエッセイが良かったのは単なる闘病記でなかったことにある。奥さんに対する感謝を込めたラブレターに近いかもしれない。女性の強さが感じられた。
余談だが、男が仕事に出て、女が家を守るという「家」の構図は、男の方が、仕事ができるからと少なからず考えていたが、実はそうではないのかもしれない。「待つ」と言う行為は、より精神力が必要であり、自分の力でどうすることもできないということは、実際に自分がやる以上に、神経をすり減らすことだ。だから、もしかしたら、男が一家の大黒柱として仕事に出るのは能力に秀でているからではなく、むしろ「主夫」という仕事がとても務まらないからかもしれない、となんとなく思った。
「羅針盤はこころ」、「大切にすべきは意味よりいま」はいずれも一色さんが登場人物に語らせた言葉だが、僕はこの二つの言葉が好きだ。

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